
岡田さん

ミランダ
英語の音は種類が多いから難しいわよね。そもそも英語にはどんな音があるか知ってる?

岡田さん
いえ、たくさんあるということしか知らないです。

ミランダ
発音の問題を克服するためには、まずは英語にどんな音があるのか知っておくことが大切よ。
英語の母音と子音の数は日本語より多い?
英語の音には、日本語と同じく母音と子音があります。しかし、英語の音は日本語ほど単純ではなく、「a」1つとってみても様々な音が存在します。そのため、英語の発音に苦手意識を持つ英語学習者の方はとても多いです。
この記事では、英語の母音と子音について、発音時の口の形にも注目しながら詳しく解説していきます。まずは英語にどんな音があり、それぞれどのように発音するのかを知ることで、発音の習得を目指しましょう。
英語の母音と子音を学ぶ前に知っておきたい「音声学」とは?
英語の母音と子音について学ぶ前に是非知っておきたいのが、音声学に基づく英語の発音ルールです。
英語の発音問題を改善するコツは、「正しい口の開き方」と「息の出し方」を知ることですが、どのようにして音が生まれるのかを音声学を通して理解しておくことで、このコツをつかみやすくなります。
音声学に基づく英語の発音①調音点
調音点とは、発音を調整するための器官で、口唇(唇)、歯、声帯などのことを指します。特に英語の音声で使われる部位には、図の通り主に8つの種類があります。
空気の流れは、肺→声帯→口蓋→舌→歯→口唇と進みます。肺から送り出された空気は、声帯を通り振動を生み、やがて口腔内へ到達しますが、口腔内での空気の広がり方、歯や舌の位置によって音声を調整します。
発音記号は、このような音声器官の動き・位置に対応しています。
音声学に基づく英語の発音②調音法
調音法とは「音を変える場所と息の通り方」を表す法則で、音声器官での音の調整を示します。実際に図を見ながらそれぞれの音声器官での調音法を見ていきましょう。
①口唇
口唇は柔軟性があるため、様々な種類の音声変化をすることができます。両唇で生まれる音を「両唇音」、下唇と上の前歯で生まれる音は「唇歯音」と言います。
口唇を使用する音声一覧
[p][b] | 両唇破裂音(両唇で破裂するような発音) |
[m] | 両唇鼻音(両唇を閉じて鼻音を生む) |
[f][v] | 唇歯摩擦音(下唇に前歯を当てる) |
②歯
歯の中でも特に上の前歯は、調音点として重要です。上下の歯で隙間を作ったり広げたりして音を変えるほか、舌が接することで音を生みます。こうして生まれる音は「歯音」と言います。
歯を使用する音声一覧
[θ][ð] | 歯摩擦音(上下前歯の間で空気の摩擦を生む) |
③歯茎
舌を歯茎につけて息をせき止めることで「歯茎音」を生みます。
歯茎を使用する音声一覧
[t][d] | 歯茎破裂音(歯茎と舌で破裂音を生む) |
[n] | 歯茎鼻音(歯茎に舌を着けた鼻音) |
[s][z] | 歯茎摩擦音(歯茎と舌で空気の摩擦を生む) |
[l] | 歯茎側面接近音(歯茎に舌を着けて側面から息を出す) |
④舌
音声器官の中で一番よく動き、調音に貢献するのが舌です。舌の位置を意識することが、英語の発音の問題を解決するための第一歩です。
子音は、舌が口内のいずれかの場所に接触したり、接近して隙間を作ることで生まれ、母音は、舌を口内のどこにも接触・接近させないことで生まれます。
⑤声帯
声帯の震えの有無によって、「有声」か「無声」かが決まります。喉元を触ったときに声帯が震えていれば有声で、震えていなければ無声となります。
⑥口蓋
「口蓋(こうがい)」とは「上顎」のことで、図表のピンクで示している部分のことです。上顎を舌で辿ると、前の方は硬いですよね。この硬い部分を「硬口蓋」と言い、ここで「硬口蓋音」を作ります。さらにその奥の柔らかい部分は「軟口蓋」といいます。
口蓋を使用する音声一覧
[j] | 硬口蓋接近音(硬口蓋に舌を近づけて摩擦を生む) |
[k][g] | 軟口蓋破裂音(軟口蓋と舌奥で破裂音を生む) |
[ŋ] | 軟口蓋鼻音(軟口蓋と舌奥が接して鼻音をうむ) |
⑦口蓋垂/⑧鼻
鼻と口蓋垂(こうすいがい)は、関連が強いためまとめて解説します。
口蓋垂とは、一般的には喉彦や喉ちんこと呼ばれる部分です。鼻歌やハミングのように鼻を使って出す音を「鼻音」と言います。これは、口蓋垂が喉奥を閉じるため空気が鼻腔に逃げることで音が出ます。
鼻を使用する音声一覧
[m] | 両唇鼻音(両唇を閉じ、鼻音を生む) |
[n] | 歯茎鼻音(歯茎と舌を接して鼻音を生む) |
母音の数と発音時の口の形
ここからは、母音の数や種類を知り、母音の発音方法について確認していきましょう。
英語の母音は17種類もある?
英語の母音の数は、分類の仕方によって異なり、イギリス英語やアメリカ英語の間でも違いがあるため絶対的な正解はありませんが、IPA(国際音声記号学会)によると、英語の母音は17種類だと言われています。
今回はIPA(国際音声記号学会)が作成した母音の発音記号一覧表をもとに、母音の数や種類、発音方法をみていきます。
図の見方
- 横軸「Front-Central-Back」:舌の持ち上がる位置
- 縦軸「Close/Close-mid/Open-mid/Open」:口の開き方
- 緑枠:中間の音
- 青枠:特にイギリス英語で顕著、もしくは方言で見られる発音
母音の発音と口の形
それでは、母音の発音時の口の形を一覧表で見ていきましょう。ここでは、日本人にとって特に発音の区別がしづらい母音に限定してご紹介します。
「ア」に近い[a][ʌ][æ][ɑ]
発音記号 | 英単語例 | 発音時の舌の位置と口の形 |
[a] | eye[ái] | 前舌・広(舌先端を上げ、口は広い) |
[ʌ] | come[kʌ'm] | 後舌・半広(舌後部を上げ、口はやや広い) |
[æ] | cat[kæ't] | 前舌・広〜半広(舌先端を上げ、口はやや広〜広い) |
[ɑ] | hot | 後舌・広(舌後部を上げ、口は広い) |
「イ」に近い[I]、[i]
発音記号 | 英単語例 | 発音時の舌の位置と口の形 |
[I] | hymn[hím] | 前舌・狭〜半狭(舌先端を上げ、口は狭〜やや狭い) |
[i] | kit[kít] | 前舌・狭(舌先端を上げ、口は狭い) |
「ウ」に近い[u][ʊ]
発音記号 | 英単語例 | 発音時の舌の位置と口の形 |
[u] | rule[ruːl] | 後舌・狭(舌後部を上げ、口は狭い) |
[ʊ] | book[bʊk] | 後舌・狭〜半狭(舌後部を上げ、口は狭〜やや狭い) |
「エ」に近い[e]、[ə]
発音記号 | 英単語例 | 発音時の舌の位置と口の形 |
[e] | air[end] | 前舌・半狭(舌先端を上げ、やや狭い) |
[ə] | about[əˈbaʊt] | 中舌・半狭〜半広(舌先端を上げ、やや狭〜広い) |
「オ」に近い[o]、[ɔ]
発音記号 | 英単語例 | 発音時の舌の位置と口の形 |
[o] | owner[ˈoʊ.nɚ] | 後舌・半狭(舌後部を上げ、やや狭い) |
[ɔ] | boy[bɔɪ] | 中舌・半狭〜半広(舌中部を上げ、やや狭〜広い) |
子音の数と発音時の口の形
続いて、子音の数や種類、発音方法についてもみていきましょう。
英語の子音は22種類もある?
英語で使用される子音の数は22種類です。
以下2つの表は、IPA子音発音記号表を元に作成した子音一覧表です。
上の図を単語と合わせてチェック!
※Rの発音[r][ɹ]について
通常英語の発音では[r]が主流であり、後者「巻き舌音」の使用はまれです。しかし、英米発音の差異および辞書や参考書によっても揺れがあることから、本記事では両者とも含めています。
子音の発音と口の形
それでは、子音の発音時の口の形を見ていきましょう。母音のときと同じく、日本人にとって特に発音の区別がしづらい子音に限定してご紹介します。
[θ][ð]
[θ][ð]の発音のコツは、舌を上下前歯に軽く挟むことです。
「th」の発音である[θ]と[ð]は、音声学のルールでは「歯摩擦音」と言います。これは、前歯の間で空気の摩擦を生むという意味です。
[θ]は「無声」で「ス」のような音で、[ð]は「有声」で「ズ」のような音になります。声帯の震えの有無で無声か有声かを区別しています。
[r]
[r]の発音のコツは、舌を軽く上側に反らせることです。
一般に「『r』は舌を巻く音」と言われますが、この言葉通り、「r」の発音は上の歯茎もしくは硬口蓋前方に向かって舌を反らせて生む音声です。これは「そり舌音」、「歯茎接近音」と呼ばれます。
[l]
[l]の発音のコツは、舌先を上前歯茎につけることです。
[l]は、舌先を歯茎につけ、舌の左右側面から空気を出す音声で、音声学上では「歯茎側面音」と呼ばれています。
英語の母音・子音の数と発音時の口の形まとめ
この記事では、英語の母音と子音について、その種類や発音時の口の形をご紹介してきました。
音声学についても触れましたが、ここでお伝えしたことはごく一部ですので、さらに理解を深めたい場合には発音の問題に詳しい音声学の参考書などを是非読んでみて下さい。
最後に、おすすめの参考書をご紹介しておきます。
おすすめの参考書:斎藤純男『言語学入門』(三省堂)、竹林慈、斎藤弘子『新装版英語音声学入門』(大修館書店)
英語の発音がいつまでたってもうまくならないんですけど、どうしたら良いでしょうか?